胚発生のタイミングは移植胚選択において有用な要素となり得るか?
~同グレード凍結胚での検討~
第66回 日本卵子学会学術講演会
(稲飯健太郎、山下誠二、笠岡永光)
背景
タイムラプスシステムは庫外に胚を持ち出すことなく観察を可能とし、さらに発生時期や異常分割等も特定できる。このため胚の状態を形態だけではなく、得られた様々な情報を駆使し評価を行うことが可能となる。そこで、移植胚を選択するうえでタイムラプスシステムから得られたデータが胚選択に利用できるか検討を行った。
方法
2022年1月以降に採卵を行い、2024年10月までに融解胚盤胞移植を行った、205周期を検討対象とした。対象胚は全てタイムラプスインキュベーターで培養を行い、採卵後5日目に凍結を行ったGardner分類で4AAのみとした。各発生時期を確定させるため、異常分割胚は除外とし、単一移植のみを対象とした。目的変数を臨床妊娠および継続妊娠とし、各発生段階までにかかった時間を説明変数として有意差検定を行った。
結果
各項目で単変量解析を行った結果、臨床妊娠、継続妊娠ともに有意差があったのは3細胞期から4細胞期までの時間(t4-t3)であった。また影響を与え得る項目と共に多変量解析を行った結果、t4-t3のオッズ比は臨床妊娠で0.485、継続妊娠で0.463、P値はそれぞれ0.00878、0.0258で有意に差があった。臨床妊娠および継続妊娠におけるt4-t3のカットオフ値はともに0.64時間で、曲線下面積はそれぞれ0.626、0.605であった。カットオフ値未満の群の臨床妊娠率、継続妊娠率は以上の群と比較して有意に高かった。
考察
t4-t3値が融解胚盤胞移植時の臨床妊娠、継続妊娠に影響した。同時期は胚性ゲノムが活性化するタイミングであり、この正常性が臨床成績に関与する可能性もある。胚盤胞が同等の形態評価であればt4-t3値を考慮し選択することで良好な臨床成績が得られることが示唆された。