不必要なアシステッドハッチングを回避できるか

第60回日本卵子学会学術集会 2019

(濱咲 舞・稲飯 健太郎・神崎 珠里・笠岡 永光)

目的

凍結融解胚盤胞移植の際にレーザーアシステッドハッチング(以下AHA)を行う施設は多い。当院でもほぼ全例にAHAを行っている。しかし胚盤胞には自力で孵化できる力が備わっており、AHAの不必要な胚が分かれば患者の金銭的負担の軽減にも繋がる。そこで今回は破棄希望凍結胚盤胞を無作為に融解し、自力孵化可能胚を見分ける項目があるか検討した。

対象

無作為に選んだ破棄希望凍結胚盤胞74個を対象とした。
【方法】凍結胚盤胞を融解し、65時間まで胚を観察し、生存率・回復率・完全孵化率を算出した。さらに
①受精方法

年齢
胚のグレード
凍結日
凍結前の拡張度
の項目で差があるのか比較検討した。

方法

対象胚74個の生存率は100%・完全回復および拡張がみられた率は93.2%であった。そのうち完全孵化胚は18.9%(14個)であり、項目別の孵化率は

①媒精29.6%(8/27)・ICSI12.8%(6/47)
②34歳以下24.2%(8/33)・35歳以上14.6%(6/41)
③良好胚21.6%(11/51)・不良胚13.0%(3/23)
④Day4胚50.0%(1/2)・Day5胚21.7%(10/46)・Day6胚13.0%(3/23)・Day7胚0%(0/3)

⑤Gardner3胚12.0%(3/25)・4胚25.0%(10/40)・5胚11.1%(1/9)
となりどの項目においても有意差はなかった。

結果

A群・B群・C群の順に胚盤胞発生率は72.4%(89/123)・53.2%(210/395)・42.9%(48/112)、良好胚盤胞率は69.7%(62/89)・67.1%(141/210)・45.8%(22/48)、妊娠率は45.5%(15/33)・30.0%(18/61)・33.3%(4/12)であった。
A群はB・C群に比べて有意に胚盤胞発生率が高かった。またB群はC群に比べて胚盤胞発生率が高い傾向にあった。
A群B群はC群に比べ良好胚率が有意に高かった。
妊娠率では全群間に有意差を認めなかった。

考察

今回の結果より、AHA不必要胚を予測するのは困難であった。また回復状態がよくても自力で孵化できない胚が多数存在する可能性が高いことより、融解胚移植をする際は可能な限りAHAAHAAHAを行った方が良いという結論に至った。。